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ベン・シャーン クロスメディア・アーティスト/神奈川県立近代美術館 葉山

神奈川県立近代美術館 葉山で開催中のベン・シャーン クロスメディア・アーティスト
へ行ってきました。

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ベン・シャーンはリトアニアからの移民で、アメリカで活躍した画家でありデザイナー。今回のサブタイトルである「クロスメディアアーティスト」という名前がぴったり、絵画、イラスト、デザイン、カリグラフィ、写真など多岐に渡る作品を残していますよね。今回の展覧会でも相当数の作品が集まっており、結構見応えありました。

公式HPは→こちら

ベン・シャーンは「ラッキードラゴン」シリーズや社会派のポスターは学校でも習いましたし有名なので、とてもメッセージ性の強い作品ばかりを作られる人だと思っていたのですが、今回の展示を観て、そこまで難しいものばかりでもないんですね。レコードジャケットや、挿絵、グラフィックデザイン分野の作品は天性のセンスを持っているのを確信できるくらいお洒落で今観ても色あせないものばかり。
私も職業上あの独特な線の描き方などとても参考になりました。
ベン・シャーンといえば「ラッキードラゴン」という印象はちょっと偏った見解だったんだなということを思い知った内容でしたね。


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彼は子供の頃アメリカに渡り、10代で石版画製作所で働き始めます。その頃培った構成力、カリグラフィなどが後々にとても影響してくるのですが、「ドレフェス事件」をテーマにした版画はまさに「ポショワール」という版画技法を用いて独特な雰囲気を持っています。
「ポショワール」とは銅版を用いたステンシルの一種で、結構手間がかかるそうです。今現在はあまり使われている技法ではありません。独特なインクのにじみが雰囲気ありますよね。
(ちょっと調べたら、安野モヨコさんがその技法で作品作られてるそうですね。)

描かれている人の表情も個性がかなり出ているので、印象深い。
他の作品にも共通して言えると思うのですが、ベン・シャーンは技法へのこだわりは相当なものがあったのだろうなと思います。版画は他にもセリグラフと記載されていましたが、いわゆるシルクスクリーン(アメリカでは孔版のことをセリグラフと呼ばれるそうですね。)の作品もありましたし、ありとあらゆる技法を駆使して作品に取り組んでいるんですよね。
クラフトマンシップを感じるのです。


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《解放》1945 年 グァッシュ・ボード

この作品は、第二次世界大戦のフランス解放のニュースを聞いて描かれた作品だそうです。フランスへ留学した経験もあるからこそ思い入れあったのだと思います。この作品よく見ると描き方が本当に細かい。遊んでいる遊具の鎖や、壊れた建物の壁紙など細部にとても繊細な施しをされているんですよね。ベン・シャーンの作品は太い線で描くシンプルな絵の方が印象にあったので、このような作品は新鮮に映りました。
子供達の無表情さがとても怖い。不穏な雰囲気をよく現していますね。



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《至福》 1952年 姫路市立美術館蔵

この作品はテンペラで描かれています。テンペラはいわゆるキリスト教祭壇画や壁画などで用いられていますけれど、ベン・シャーンはこのテンペラをとてもよく用いていますよね。
この作品で印象的なのは黒の線。小麦の穂がリズム感を感じさせる様に並んでいて、とても目に留まりますし、線の抑揚が何とも言えない味を出しています。
農夫の手が添えられている部分はその穂と穂の間にカラフルな彩色が施されていたり、黄金色のまさに明るい画面に黒の線はすごく美しく呼応して映えるなと感じます。
そんな一見楽しそうな画面なのに、農夫の表情はどこか曇っているような印象なんですよね。
この作品も、報道写真を引用してほぼそのままの構図で描かれているようですが、市民の思い、労働者の思いをこの作品に込めているでしょう。




彼の作品でとても印象に残るのが、手の描き方だと思いました。手をたくさんスケッチされているのも今回展示されていたのですが、手が感情を表しているようですよね。決して美しい手ではない。市民や労働者のごつごつとした明らかに働いている手なのです。
デッサンで難しいとされるのが手で、画家によっては苦手としてあまり描かれない場合も多いのですが、ここまで表情を手で表現する画家は珍しいのではないでしょうか。線で描くモチーフとして顔の表情や、手の曲線を追求していたのではないかなと思いました。



FSA農村安定局の依頼でたくさんの写真も残していますね。ウォーカー・エヴァンスと出会い、写真の手ほどきを受けたそうですが、その写真は実に市民の表情を生き生きととらえていますよね。
被写体と本人の関係値がすごく親密に感じるのです。やさしい表情をしている人も多く、丁寧な取り組み方をされていたのかなと思わせるような作品です。
ちょうど写真美術館で展示されているアウグスト・ザンダーの肖像写真などに影響を受けているのも頷けるるなと思いました。
その撮った写真を、さらにテンペラなどで再構成しているところもとても面白いなと感じました。



デザインの領域にも手腕を発揮していますが、私が印象に残った作品は
「ラブ・ソネッツ」のための原画と、
「モダン・アメリカン・ミュージックシリーズ、ヴィンセント・バーシケッティ/ポール・クレストン」レコードジャケットの構成です。
どちらも水彩で描かれているのですが、過度な印象がないのに、構図もとても良く雰囲気が出ていてとにかくお洒落ですよね。
ウィットに富んでいるし、これぞ天性のセンスだと思いました。デザインはやるべくして関わった仕事だなと本当に思います。
不安を感じる社会派のテンペラ画や版画もいいですが、ただただ美しいと思わせるデザインの仕事もとてもベン・シャーンを象徴している作品だなと感じるのです。
ユダヤ人だからこそのヘブライ語カリグラフィーの装丁もとても美しい。文字へのこだわりは10代の頃に培った技巧を生かしているのかもしれませんね。
ここまで独特の雰囲気を出せるイラストを描けるなんて、本当にうらやましい。
勉強になりますね。



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『版画集:リルケ「マルテの手記」より:一行の詩のためには…』
《扉-1》 1968 年 リトグラフ・紙
神奈川県立近代美術館(麻生三郎コレクション)


この版画集の作品は今まで見てきた中で一番やわらかい印象を持っていました。
随分変わりましたね。作風も。人の表情も堅くなくなっていたり、フォルムも丸くなっているように感じたり。


彼の作品を見ていると、アートや絵画は理想美を追求し、高尚に高めていくスタンスで描かなくてもいいのだということをすごく実感できました。
決して上から目線で描いているのではない。そのモチーフや被写体となっている市民の一人一人と対話をしているかのような親密で、同じ目線に立って表現をしていたことがよくわかります。
テンペラの技法を使っていても、版画でも、その出てくる作風はとても素朴で、高らかに崇高さをうたうような表現は一切ありません。
日本人デザイナーに多大な影響を与えた天性のセンスも相まって、こだわりはとても感じつつも、世界観を重視するようなその向き合い方に私はすごく共感しました。
一同に観られる機会ができて、本当に良かったです。

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会期修了間近だったこともあり、かなり人が来ていました。
葉山でこれだけの人が集まっている展覧会も珍しいなと思えるくらい。


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ベン・シャーン クロスメディア・アーティスト

会期:2011年12月3日(土)-2012年1月29日(日)
休館日:月曜日(1月9日は開館)
開館時間:午前9時30分~午後5時(入館は4時30分まで)
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